LGBTQ+の人達の中には、今も昔も大きな苦しみと葛藤を抱えて生きている人が数多くいます。
過去には、そういった方達が巻き込まれて悲しい出来事となってしまった事件が数多くあります。
今回はそういった事件に目を向けたいと思います。
過去の人達の悲しみ、苦しみを知ることで今に活かすことができるからです。
今回は日本国内で起きた事件を4つ紹介します。
それぞれの事件の概要と歴史的影響を解説致しますので、それぞれの当事者に思いを馳せながら読んでみて下さい。
1.ブルーボーイ事件
<概要>
1965年、性転換手術(現在の性別適合手術)をおこなった医師が麻薬取締法違反と優生保護法(現在の母体保護法)違反で逮捕された。
しかしその背景には、男娼(売春をする性転換した男性)を取り締まるために、大元である医者を逮捕してしまおうという警察側の狙いがあった。
裁判の結果、医師は有罪判決に処された。
<歴史的影響>
この事件によって「性転換は違法・悪いこと」という認識が広まってしまいました。
また、医師側も積極的に性転換手術を行う人が減ってしまい、日本における性転換(性別適合)の理解と技術進歩が他国と比べて遅れをとることになりました。
警察の都合で性的マイノリティの方々の葛藤をより深いものにしてしまった悲しき事件です。
2.東京都青年の家事件
<概要>
1990年、同性愛者の団体「動くゲイとレズビアンの会(OCCUR[アカー])が東京都にある「府中青年の家」を利用した際、同じタイミングで利用していたキリスト教団体などから差別的な発言をされたり、浴室を覗かれたりした。
アカーはそれらの言動を訂正してもらうよう働きかけたが、キリスト教団体らは拒否。
さらにその後施設の利用を再申請したら
「青少年の健全な育成にとって、正しいとはいえない影響を与える」
「秩序を乱す恐れがあると認められる者」
だとされ、使用させてもらえなかった。
アカーはその後、東京都及び青年の家を提訴。
1997年には原告側の勝訴となった。
<歴史的影響>
「東京都青年の家事件」は裁判所が初めて公式に同性愛者の権利を認めた判例となり、性的マイノリティに悩む人達にとって大きな勇気になりました。
「従来同性愛者は社会の偏見の中で孤立を強いられ、自分の性的指向について悩んだり、苦しんだりしてきた」
という一文が判決文に載りました。
「性的指向」という言葉が判決文に載ったのも初めてです。
人間には各々の「性的指向」があり、それによって「悩んだり、苦しんだり」している人がいる、ということが公に認められた意義は大きいと言えるでしょう。
3.新木場殺人事件
<概要>
2000年2月11日、新木場の公園「夢の島公園」にて33歳の男性の遺体が発見された。
男性は殴打され、無惨な姿で発見され、金銭も奪われていた。
殺人の容疑で逮捕されたのは25歳の無職の男性を中心とした7人の男性グループ。その中には未成年もいた。
夢の島公園はゲイの方達の出会いの場(俗に言うハッテン場)として有名だった。
犯行グループはそのゲイの人達を狙って、暴行を加え、強盗をしたいた。
逮捕後、陳述にて犯人は
「ホモは気持ち悪い。ホモは被害届を出さない。ホモだというのが恥ずかしいから」
という卑劣で許し難い発言をした。
<歴史的影響>
性的マイノリティの方々が謂れのない理由で被害にあってしまった痛ましい事件です。
犯行グループは「ホモ狩り」と称して幾度となく新木場の公園にいる人達を襲っていたようです。
ゲイだという理由だけで暴行をされたりひどい言葉を浴びせられたりすることを「ゲイバッシング」といいます。
この事件は日本で初めての「ゲイバッシング」による殺人事件でした。
日本は海外に比べてマイノリティに対するヘイトクライム(憎悪犯罪)が少ないとされていましたが、その認識を覆してしまう悲しい事件でした。
性的マイノリティの苦しみや葛藤が浮き彫りになり、改めてLGBTQ+に対して向き合うきっかけになった事件と言えるでしょう。
4.一橋大学アウティング事件
<概要>
2015年4月、一橋大学の構内にて一人の男子学生Aが転落死した。
Aはゲイであり、男性の友人Bに好意があることを伝えていた。Bは「付き合うことができない」とAに伝えた上で数日後、仲間内のLINEグループにてAがゲイであることを暴露してしまう。
それを知ったAはパニック障害を起こし大学構内のベランダから転落して死亡した。
<歴史的影響>
この事件はセンセーショナルな内容であり、記憶にも新しいかも知れません。
この事件は「アウティング」(LGBTQ+の当人の許可なく、その人のセクシャリティを暴露すること)について深く考えるきっかけとなったと言えるでしょう。
(「アウティング」に関してはこちらの記事をご覧ください。)
二度とこのような事件を繰り返さないように、あらゆる人達への想像を働かせていくことが大切です。
まとめ
今回紹介した事件は国内でも有名な、歴史的な事件の一部です。
こちらの事件以外にもLGBTQ+の人達が巻き込まれた悲しい事件は数えきれないほどあります。
地球上に生きるあらゆる人が思いやりの心を持って、どんな人でも快く生きることができる社会をみんなで作っていきましょう。